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IT導入地域課題解決

店舗予約タブレットの導入により受注業務をデジタル化。お客様の満足度もあげ、従業員も働きやすくするサービスを目指す!株式会社芝寿し

株式会社芝寿し

株式会社芝寿し(しばずし)は、石川県金沢市に本社を置く寿司弁当を製造・販売する企業。押し寿司を笹の葉でくるんだ代表商品「笹寿し」や、季節感のある各種お弁当の販売を行っています。笹寿しは年間1100万個以上を製造し、“金沢のソウルフード”とまで言われており、お弁当は高品質で多種多様・大量生産を可能にする工場を持っています。

デジタル化にあたり、どのような課題がありましたか?

当社は高品質な寿司・弁当の大量生産能力に加え、予約受注の柔軟性が強みです。予約受注については、「雨が降ったら当日キャンセルOK」、「空の弁当箱の回収」、「商品のアレンジ(内容変更、のし対応)」等、お客様のご都合に合わせた柔軟なサービスを提供しています。

そのサービスの提供は、経験豊富な従業員が支えているのですが、アナログで複雑な仕組み・ルールであるがために、長年システム化・デジタル化ができず、数十年同じ仕組みで運用していました。そのため、本社の受注係や店頭の販売員が職人化してしまい、限られた従業員でないと予約受注ができないため、新人が入っても引継ぎ・対応が困難であり、更に既存従業員が職人化するという悪循環が続いていました。

店舗における具体的な受注の仕方は、お客様の様々なご要望を全て販売員が受け付けて注文用紙へ記入するというものです。そしてその注文用紙は本社へFAXで送信され、本社の受注係がそれを見ながら販売管理システムに入力していました。このような二重の手間もかかっていたのです。

具体的にどのようなデジタル化に取り組んだのですか?

予約受注の属人化からの脱却と省力化を目的として、全店舗に予約タブレットを導入することにしました。これは2020年度の石川県の補助金を活用して開発したものです。導入のポイントとしては、お客様の高い満足度に繋がっている、従来の柔軟なサービスのルールをいかにシステムで実現するか、ということでした。

予約タブレットの画面は、各店舗の販売員がお客様の予約要望に沿って入力するか、お客様自身が入力できるようになっています。「申込者名」「受取日」「商品選択」などの基本的な項目はもちろん、前述した「雨が降ったら当日キャンセルOK」、「空の弁当箱の回収」、「商品のアレンジ(内容変更、のし対応)」等の簡単な入力、そして販売員向け機能として、「商品ごとの販売不可日の自動設定」、「お客様情報の検索機能」、「宅配送料の自動計算」、「本社への申し送り事項」などの機能を充実させました。恐らくここまで細やかかつスムーズに入力できる弁当注文システムは、たぶん日本全国探してもないと思います。

新たな予約タブレットと利用風景

予約タブレットの注文用紙フォーマットは、これまで紙に書いていたものと全く同じであり、注文完了時にプリンタから印刷されます。このシステムを使えば、お客様または販売員は、ガイダンスに沿って1画面ごとに選択していくだけで、間違いのない予約票を作成できます。以前は販売員による販売不可日や送料の間違いがあり、お客様にご迷惑をおかけしていましたが、それもなくなりました。また注文完了後はタブレットのデータが本社に送付され、本社の受注係が最終チェックをして、ボタンを押すだけで本登録になるため、二重入力の手間が省けました。これにより業務の効率が従来比で約35%向上し、本社受注業務の大幅な効率化と店舗販売員の業務簡易化につながりました。

その他、店舗にカメラを設置し、本社にTVモニタを設置して、店舗と本社をつなぐことで、リアルタイムの販売状況を共有し、店舗別のお客様状況に合わせた商品補充・商品転送を行っています。

各店舗の様子がわかる、本社のTVモニタの様子

導入まではどのような過程がありましたか?

予約タブレットについては、システムの構想・設計から導入まで約2年かかりました。本社と店舗の生の声をヒアリングしながら業務フローを作成し、お客様と本社と店舗全てが幸せになる姿(ビジョン)を検討しました。

しかし、大枠の方向性は一致しても、本社と店舗の役割分担の折り合いがつかないこともあり、総論賛成各論反対の状態で開発をスタートせざるを得ない状況でした。そこで実際の開発は、前述したような複雑なルールの確認を含め、プロトタイプを作って試運転し、各現場の意見を聞いて、また作り直して……というサイクルで完成度を高めていくようにしました。

「まだテスト画面だけれど、ちょっと使ってみてくれないか。あなたの声が芝寿しの会社ひいてはお客様のためになるのだよ。」という働きかけを続けていくことで、このシステムは自分で作ったもの、という感覚を持ってもらえたと思います。それにより、各部門が使用感やメリットを実感することができ、小さな成功体験を積むことで、少しずつ店舗-本社間の役割分担、業務ルール等も整理していきました。

また、店舗へのタブレット端末の導入にも苦労しました。お客様も販売員も比較的年齢層が高く、今どきの機械自体に拒否反応があったためです。そこで、店舗販売課所属で、各店舗と接点が多い岩本に依頼し、約30店舗の直営店舗に対して、エリア別・個別に何度も巡回し、説明を繰り返しました。特に、店舗の販売員さんの想いに寄り添った関係づくりが重要だったと思います。実際に顔を合わせて話を聞いた上で、取り組みの目的を伝え続けることでまずは信頼関係を構築していきました。

そして現状の予約の仕組みやルールがとても複雑で、繁忙期などはミスが多く発生し、お客様にご迷惑をお掛けしていること、予約タブレットはそのルールをすべて集約しているので、きちんと予約を受けられるということをひたすら説明し、タブレット端末とテスト画面を触ってもらいました。これにより、機械への抵抗についても徐々に解消していきました。様々な人が関わって成り立つ仕事だからこそ、人と人の信頼関係が一番重要ですし、仕事を支えるシステムにも愛着・愛情のようなものが必要だと考えています。

今後取り組むことを検討しているデジタル化はありますか?

予約タブレットをはじめ、今後も人がやらなくてもいい作業は全てデジタル化・自動化し、点在するデータをつなぐこと、見えるようにすることを前提として事業や業務の在り方を見直すことで、DXを推進していきます。一例として、POSレジデータの有効活用を進めます。時間帯別の売り上げ、客数、客層別の売れ行き・併売分析等を見えるようにし、さらに蓄積した販売データをクラウド上でAIが分析し、需要予測情報を発注に活かしていきたいと考えています。この取り組みには、単純な売上増とロスの削減みたいな直接的な効果だけではない、よりお客様に喜んでいただけるようなマーケティング効果があると信じています。まだ取り組みを開始したばかりであり、各部門を巻き込んでいくのは大変ですが、こちらも、試運転と現場メンバーの巻き込みを繰り返し、商品開発、販促、発注等の仮説・検証に活かしていきたいと思います。

また、お客様からいただいていたアンケートはこれまでハガキが主でしたが、今後はお弁当の掛け紙についたQRコードからの集約と集計を行い、お客様の様々な声、商品の売れ行き、店ごとの評価等を、上記の需要予測の取り組みと連動させることができようにしたいと考えています。

左から、経営企画室の小川さん、店舗販売課の岩本さん

点在する情報をデジタル化してつなぐことで、仕事と仕事がつながり、お客様の満足度もあげ、従業員も働きやすくする。現場とITに想いをのせ、点を線にしていくことで、細やかにしなやかに会社一丸となり進化しています。