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IT導入地域課題解決

未来を見据えてカメラなど食品や自分たちに合ったITを導入。動画コンテンツでも「活き」な情報を発信。大口水産株式会社

大口水産株式会社

地域の人々に愛される魚屋として、1944年に設立。水産物の加工・流通・販売を担う総合食品商社として、変わらない本質と新しい価値を追求している会社です。お店・事業所は7か所に広がり、直近ではイオンモール白山店に直営のお店をオープンしました。イオンモール白山店では65型くらいのモニター4基でお客様に季節感含めアナウンスしながら活気のいい声で刺身から総菜まで販売。平日でも行列ができる人気店となっています。

近江町の本店は、昔から変わらずひときわ目立つ販売面積を誇っています。店舗カメラを導入してずっと配信を行うなど新しいことを取り入れながら「伝統」と「革新」の両輪で100年企業を目指している事例をご紹介します。

どのようなデジタル化に取り組まれていますか?

10年前から現在と、20年前から10年前だと本当に同じ10年かと思うくらい時代が様変わりしています。昔のように魚屋に来て初めて「今日は何が有るのかな」と分かる時代ではないと思っているので、デジタル化に力を入れています。

FAXを求めるお客様がいるので残ってはいますが、LINEのグループで担当者とお客様とで卸しの情報が情報共有できるようにしています。また、前日の夕方くらいまでには担当者がお客様にいくら取引をしたのかグループラインでわかるようにもなっています。システム化まではいかないのですが、情報共有がデジタルになってきたかたちです。

社内の情報共有としては、まだまだペーパーが多いのと決裁までいくスピードが遅いのですが、一部ではGoogle Workspaceで社内のチャットを使用しています。お客様に関する優先すべき情報は特にスピーディーに共有することができています。またスケジュールもGoogle Calendarで共有されています。

店舗にも多数IT導入をしていますが、今もずっと「どうすればいかに早く管理できるようになるかな」というのは考えています。当社に買いにくるお客様は3種類の方がおられて、1.観光客、2.料理屋 3.一般とおられます。一般のお客様の平均は、イオンはすごく若いが、他店舗は50代以上ですごく高い。アナログとデジタル両方駆使しながら、デジタルの現状・未来を考えています。

デジタル化において、意識している点は?

デジタル化はコロナ禍になってクラウドツールなど導入を開始し1年半くらいが経過。使い方を教えるために講師を呼び15人くらいを集めてホワイトボードを使って教えてもらいましたが、最初の2つ目くらいまではいいのですが、3つ目くらいになってくるとレベルが高くなってきて、先に進むことをあきらめてしまう人もいました。

その人たちには最初の一歩としてGoogleのカレンダー機能を使って「○○で会議があります」とお知らせをして参加・不参加に返事してもらうなど練習を積み重ねています。一日経っても返事が来ない人には、直接見たのか確認の連絡を行うなどして、少しずつ浸透はしてきています。本当に苦手な人には、インストールをしてセッティングをして押すだけの状態まで対応しています。

あただ一番効果があったのは、年配社員が一生懸命に使ってくれていることです。みんなに「これできたよ」と声掛けをしてくれています。僕らのような団塊Jr世代が押し進めるより上の世代の人が、俺も使っているからと見せてくれるから、みんなに浸透しています。SNSも、現状は上の世代の人はTwitterやInstagramなどを使うことはできなくても見ることはできるので、下の世代は売り上げを取るために活用、上の世代は便利なものを見てもらい管理をしてもらっています。

ペーパーレスも一つの課題として意識。1ヶ月に何万枚と紙の廃棄量がでています。デジタル化を推進することがペーパーレスにつながることも意識しデジタル化を社内に広げています。

デジタル化の進み具合は?

世代が違っても、時代に合わせてみんなでやってみようと頑張ってはいますが、トライアンドエラーで実施しているので、自分が思い描いていた「一年たったらここまでくるかな」という着地にはまだ来ていません。

また例として、テレビで、東京の災害時にタクシー乗り場で行列ができているのを見ましたが、みんなスマートフォンを持って情報収集していました。知っている人はモバイル配車サービスを利用して列に並ばなくていい可能性もあります。この例の通りで、やらないと損をする訳ではないが、知っていると世の中が便利になるのがデジタル化だと思っています。

今のZ世代の人もあと5年くらいしたら27~28歳くらい。この子たちは生まれた時からインターネットがあって、便利なものは絶対使う。魚離れもしているだろうし、この子たちが主夫・主婦になる時代が6~7年後に来る。それが標準へと向かっています。

我々の業界は1年後に思ったところへ向かう企業ではないから、失敗するかもしれませんが、自分たちは先を見越してチャレンジしていかないといけません。ゆっくり時間をかけて今から取り組んでいかないと間に合わないと思っています。

コロナ禍においてIT導入をどのように進めていくか、どのような将来ビジョンがありますか?

2年4か月くらい前に、中央市場の横に当社の水産加工場を作ったときに全国の水産加工場へ視察に行きました。全国の事例から、10~20個の防犯カメラを導入しました。遠方の事業所へ行く頻度が少なくなり、状況もリアルタイムで把握できるようになりました。役員全員が常時カメラにて店舗の状況確認をして瞬時に連絡などをすることをはじめたのがデジタル導入のきっかけです。

その後「YouTubeライブ中継をやってみてはどうか?」と声かけがあり、導入しました。ちょうどコロナ禍で、魚キッチンスタジオ(魚食を奥様方に広めるためにしていたもの)が中止になっていたこと、魚をさばくと再生回数が上がることから、魚食を広めるためにライブもやることにしました。動画コンテンツの企画や編集は現在内製化を実現しています。そこからEC販売へも考えて実現しています。

またイオンモール白山店の店舗ではデジタルサイネージも導入し、キャッシュレス決済も率先して導入しています。今は使用率もかなり高くなっています。

この先まだチャレンジするかは決まっていませんが、モバイルオーダー導入を少し考えています。イオンモール白山店では多い時に50人くらいレジに並ぶことがあります。現状はお寿司など注文して決済するのに何十分もかかりますが、モバイルオーダーならばレジに並ばなくていい。また人手不足なので、これから先デジタル化を進めていくのであれば省人力化がポイント。レジを改革することによって人員も減るのではないかと考えます。

レジだけではなく、総菜の作り方においてもスチームコンベクションを導入して自動で焼いたりフライを揚げたり火の番をしなくてもいいようにすれば、パートが1人減るかもしれない。人が集まらない業界に対してどのようなIT戦略をするのかを日々考えています。

魚屋のデジタル化の未来を見据える荒井社長

しかし活気がいのちの魚屋なので、江戸時代から続く古きよきものが全てデジタル化することがいいとは限らない。デジタル化により、時間削減やITツールでの接点が生まれてお客様とは繋がる機会は増えたので、うまく使って商売をしていきたいです。

自販機での刺身の販売など面白いことして、お客様を楽しませたいと思っています。